情報ライブラリー
- のぼりべつ酪農館は、かつては学校でした。学校の名前は、登別市立札内小中学校。児童・生徒数の減少により、平成10年(1998年)3月で廃校になりました。
- 廃校後は、札内高原館と命名され、学校の歴史資料を保存するとともに、農畜産物の加工を研究する場として、また地域の人々が集うコミュニティ施設として開放されてきました。
- そして平成16年(2004年)、地元の酪農家や産業関係者の出資により、有限会社のぼりべつ酪農館が設立されました。
- 登別・室蘭産の生乳は、北海道でもトップクラスの乳質を誇ってきましたが、地元ブランドの牛乳や乳製品は存在しませんでした。地元の良質な生乳だけで作る乳製品―その夢をかなえるために、のぼりべつ酪農館は始動します。
- 廃校舎の一部が乳製品の工場に変わり、のぼりべつ牛乳をはじめ地元ブランドの乳製品が地元の店に並ぶようになりました。品質に裏付けられた美味しさは瞬く間に話題になりました。のぼりべつ牛乳は市内の学校給食で毎日提供され、子供達に喜ばれています。
- 平成21年(2009年)に株式会社になりました。
のぼりべつ酪農館エントランス
のぼりべつ牛乳
- のぼりべつ牛乳は低温殺菌牛乳です。65度の温度を30分間キープして、ゆっくり殺菌します。
- これに対し、ほとんどの市販の牛乳は超高温瞬間殺菌牛乳です。120度位のものすごく高い温度と高い圧力をかけ、3秒ほどで瞬間殺菌処理します。
- 店頭ではどちらも「牛乳」とされますが、中身は大きく異なります。ステーキの焼き方に例えてみるとわかります。低温で調理した方が、素材の風味や栄養成分が損なわれにくく、消化吸収も良いのです。
- 低温殺菌は、食品へのダメージを最小にして、食品の中にいる有害な菌だけを殺菌する方法です。19世紀にフランスの細菌学者ルイ・パスツールが開発しました。
- 病原微生物や腐敗菌などの有害菌は、35~40℃の温度が最も生息しやすく、60℃以上になると死滅します。そこで、63度の温度を30分間保つ殺菌方法を試したところ、食物の腐敗を止めることができ、しかも食感や味覚への影響は最小限にとどめることができました。これが低温殺菌(パスチャライゼーション)です。
- 低温殺菌は牛乳以外にも、ビール、ワイン、日本酒、飲料水、果汁、卵、醤油、漬物、肉加工品などの殺菌処理に広く利用されています。
- 低温殺菌牛乳(63-65度で30分加熱)の方が生乳に近く、自然な味わいで飲めるのに、なぜスーパーやコンビニで売っている牛乳のほとんどが、超高温瞬間殺菌牛乳(120度以上の温度で3秒ほど加熱)なのでしょう?
大半の牛乳が超高温瞬間殺菌になる理由とは…
(1)ローコストだから
生乳を低温殺菌するには、乳牛を健康に育てて、クリーンな環境で搾乳し、すみやかに工場に運び、時間をかけて殺菌しなければなりません。すべての工程に高い意識とコストや労力がかかります。仕事量やコストを抑えたい牧場やメーカーにとっては、超高温殺菌はありがたい方法なのです。
(2)生乳の質を気にしなくて良いから
大きな乳業メーカーは、たくさんの牧場から生乳が集まります。それぞれの牧場の衛生的乳質にはバラツキがあります。また、集荷後、何日かはタンクの中に貯めておくので、さまざまな菌が繁殖します。超高温瞬間殺菌は、すべての菌が消せるので安心なのです。
(3)賞味期限が長くなるから
超高温瞬間殺菌牛乳は菌が全滅するので、低温殺菌牛乳よりも、賞味期限が長くなります。店舗や家庭でも、賞味期限が長い方が歓迎されます。
(4)大量に製造できるから
超高温瞬間殺菌は、数秒で大量の生乳を殺菌できます。製造量の多いメーカーにとっては、とても便利で効率的な手法なのです。
(5)価格が安くできるから
超高温殺瞬間菌牛乳は短時間に大量に生産できるので、ローコストで価格も安くなります。牛乳はどれも同じものと思っている方も多く、安い方から売れていきます。
- のぼりべつ牛乳には、大半の牛乳には見られない性質があります。それは、クリーム状の固まり(=クリームライン)ができやすいことです。クリームラインは、コップに牛乳を注いでしばらく置いた時や、牛乳パックの内側をさわってみると見つかります。
- クリームラインは牛乳の中の脂肪分が固まってできます。バターやヨーグルトに近いものです。そのまま口に入れても、コーヒーのミルク代わりにしても、料理に使っても問題ありません。
- クリームラインができる理由は、のぼりべつ牛乳が完全な均質化(ホモジナイズ)をかけていないからです。
≪ホモジナイズとは≫
生乳の中には脂肪球が含まれています。この脂肪球は固まりやすく、牛乳工場の配管やポンプが詰まります。そこで、ホモジナイザーという機械にかけて脂肪球を細かく砕き、生乳を均質化して滑らかな状態にしてから加工に回します。この処理がホモジナイズです。大半の牛乳はこのホモジナイズ処理をしています。
- ホモジナイズは製造にとって便利ですが、牛乳を傷つけ壊す行為とも言えます。また、ホモジナイズで砕かれた脂肪球からは、乳糖が飛び出して来ます。乳糖分解酵素が少ない人は、この乳糖によって腸が刺激され、お腹がゴロゴロします。
- ホモジナイズ処理をしない牛乳は「ノンホモ」と呼ばれます。クリーム感があり、濃厚な味わいです。のぼりべつ牛乳は、ホモジナイズを半分だけかけています。ハーフホモです。製造機械上どうしてもホモジナイズが必要なので、この手法に落ち着きました。
- 登別の生乳は、通常よりも脂肪球が大きいという検査結果があり、ハーフホモでもコクが損なわれず、甘く、のどごしが良く、さっぱりした後味がが楽しめます。
- ホエーは乳清(にゅうせい)とも言います。チーズ作りの際に牛乳からタンパク質や脂肪分を分離した後の液体です。ヨーグルトの上に貯まる水分も、このホエーです。
- ホエーは単なる水ではありません。乳酸菌、乳糖、水溶性タンパク、ミネラルなどを豊富に含んでいます。昔は捨てていたのですが、栄養があるから家畜に飲ませてみよう、という試みがなされました。そのホエーを飲んで育った豚がホエー豚です。当社のソーセージやベーコンに使われる登別豚もホエー豚です。
- ホエー豚は胃腸が丈夫で、病気になりにくく、薬いらずで健康に育ちます。肉質はふつうの豚肉よりも柔らかく、旨みが豊かで、臭みがありません。登別豚は、1960年代に確立された欧州のホエー研究にもとづいて飼育されています。
- 近頃、ヘルスコンシャスな人達やグルメの間で、グラスフェッドビーフやグラスフェッドバターなどが人気です。グラスフェッドとはgrass(牧草)とfed(飼育された、食べた)の合成語で、牧草を食べて育った牛を指します。
- 放し飼いの牛たちは、思い思いに行動し、牧草を食み、ストレスフリーで育ちます。そんな牛たちの肉や乳製品はヘルシーで、本来の自然な美味しさがあります。
- 普段私たちが食している牛肉や乳製品は、グラスフェッドとは対照的なグレインフェッドです。グレイン(grain)は穀物です。わが国の大半の肉牛、乳牛は、トウモロコシや大麦、大豆などの穀類を食べて育ちます。高糖質の飼料で効率的に太らせ、畜舎の中にずっといて運動不足。こうして、霜降り肉や脂肪分の高い生乳ができ上がります。
- はっきり言えば、グレインフェッド牛はメタボです。健康な牛とは言えません。栄養も偏っているので、病気も心配。それに、穀類の飼料にはカビや農薬、遺伝子組換えの懸念も指摘されています。こうした実情が知られるようになって、グラスフェッドを求める消費者が増えているようです。
- グラスフェッドビーフを知る人達が増えてきて、グラスフェッドミルクであるのぼりべつ牛乳も改めて注目されています。
- 登別・室蘭は、太平洋に面しています。陸地に向う海風が海上の霧を運び、そのシャワーがカルシウムやマグネシウムなどのミネラルを牧草地に与えます。牧草地では、マメ科やイネ科の5~7種類もの牧草がすくすくと伸びます。これほど多彩な牧草が生える場所は、北海道でも多くありません。
- 登別・室蘭の乳牛酪農家の数は10件ほどです。十勝などに比べれると極めて小規模な酪農地帯ですが、飼育環境にはとても恵まれています。
- 高原の冷涼な気候は乳牛の発育に適していて、栄養に富んだ複数種の牧草を食べた乳牛からは、乳酸菌が元気な、滋養あるクリーム色の香りの良い生乳が出ます。
- グラスフェッドミルクには、飽和脂肪酸、抗酸化成分、ビタミンなどが、一般的な生乳よりも多く含まれます。また免疫力や心臓の健康を増進し、体重コントロールなどが期待されるCLA(共役リノール酸)の割合が高いことも分かっています。
- 新しい牧草が高原を覆う春から夏にかけての生乳は、草の香りに満ちた、爽やかで、エネルギッシュなミルクです。牛乳は生もの。季節によって牛乳の味が微妙に変化することを知ると、のぼりべつ牛乳の楽しみ方もより深くなります。
登別市内の牧場にて